志賀理江子『ブラインドデート』

志賀理江子

『螺旋階段』での展示も特異だったが、
今回『ブラインドデート』はさらに深化。
だだっ広い暗闇空間にシャカシャカと音が響きわたり、
光り点滅で写真が切り替わっていく。

20台ほどのスライドプロジェクターが
肉眼でみえてなかったものを写し出す。

弔いを通して、人間の存在の生死をグロテスクに滑稽に
儀式的に浮かび上がらせる。
民俗学のアプローチから深く哲学に潜り込む姿勢は
『悲しき熱帯』のレビー・ストロースに近い。

『カナリア門』『螺旋階段』、
以前の個展のときに発刊された志賀理江子写真集には、
極私的な社会考察からはじまる思索と
根源的に不可思議な物語がいくつもいくつも綴られている。
写真家、アントワン・ダカタの『抗体』とともに、
21世紀の優れた詩集のトップにあげておきたい。

猪熊弦一郎美術館で9月3日まで。
丸亀は近い。