12・31
音もなく牡蠣啖ひゐる家族らのたれか罪犯さず生終へむ : 塚本邦雄
〜〜飮食ののち落ちる赤い緞帳
12・30
戦争や葱いっせいに匂い出す : 高野ムツオ
〜〜戦前のことしかとこの目で
12・29
雁を食せばかりかりと雁のこゑ毀れる雁はきこえるものを : 葛原妙子
〜〜味寝(うまい)する獣の肉の熟成度
12・28
河豚食うて仏陀の巨体見にゆかむ : 飯田龍太
〜〜鍋底われて海底へでる
12・27
鬱林のまんなかに缶その地下の秘密のたらいで米を研ぐべし : 高柳蕗子
〜〜黒弥撒のワインがぶ飲みフラスコで
12・26
佛手柑や性育ちゆく石の間 : 花尻万博
〜〜珊瑚の枝にひそむ赤虫