・・・デュシャンが「モナリザ」に口ひげを描いて見せたのは
(「L.H.O.O.Q」)、俳諧でいえば、「手鼻かむ音さへ梅の盛哉」の
書き方だ。デペイズマンやオストラニーニェという西洋の詩的手法と、
俳句の取り合わせとが、似ていながらも根底から異なるのは、
この「気合い」だ。作為や計算のよっては、究極の取り合わせには、
たどり着かない。
春雨やはなればなれの金屏風 : 許六
・・・あたかもダナエを孕ませるためゼウスが変化した
黄金の雨さながらの、美しい「春雨」だ。
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『究極の俳句』高柳克弘