食句塾季刊誌 秋号 :お話サラダ

『夜と霧』を読む
大象

30代に読んだ本を70過ぎて読む。これほど新鮮な感動はない。
『百年の孤独』をコロナ最中に再読した興奮を今一度、今回はイス
ラエルのガザ大虐殺の最中に『夜と霧』を再読。
 『心理学者、強制収容所を体験する』というタイトルだから極め
てクール。大岡昇平『俘虜記』はレイテでの俘虜収容所の記録であ
り、この二冊は第二次大戦の記録として比較して読んで興味尽きな
い。

 時代は未来世紀に向かって進化し続けているはず。人類は類人猿
の種から成長してきた証明のドキュメント資料が山と積まれている
文明も文化も。しかし、しかし、それが宇宙の罠。これらの書物に
触れて、世界中の知性がドストエフスキーのブラックホールの襞襞
を弄る手付きが気になる。
そろそろ老化で体力がなくなってきた。最後に『カラマーゾフの
兄弟』を40年ぶりに読みながら、顔に本を被せて誰にも気付かれ
ないうちに死ぬとしよう。