新蕎麦やうすきみどりの一番粉 : 神蔵器
蕎麦打ちにとって、新蕎麦がうれしいのは、
淡い緑にうちあがることです。
食べるときに、よくみるとわかりますが、
やはり蕎麦打ち台にひろげたときの
ことしの新鮮な自然の実りの色彩が
いとおしく、頬づりしたくなります。
箕面『よし川』。
できてまだ2年ぐらい、席数もすくなく、
しつらいもそんなに凝ってはいません。
だけど、カウンターにすわっていたら、つぎつぎと
お客さんが入れ替わっていつも満席。
しかもそれがすこしもあわただしくなくて、
みなさんゆっくりと、蕎麦をたのしんでいる。
はかったように、うまい具合にいれかわっていくんです。
こっちは、昼酒をのみながら、ゆるゆるとながめているわけですが、
ああ、ここの蕎麦はきっとおいしい、と実感します。
その通り、
メニューには3種類の蕎麦。
粗挽きの野太さ。ご主人の人柄が打ち方に
でています。
蕎麦は腹を満たすためにすするのではありません。
生きているこのひとときの時間をたぐりよせる、
よすがだったんです。
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【タイム食句】
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