そことしもない・・・

薄田泣菫の随筆は湿度加減がいい。
文章のすみずみにいたるまで澄みわたり、
きららをふくみつつ、鋭く、もろく、あえか。

〜そことしもない旅に上のぼる
〜そことしもなく漂ふうちに

ほとんどつかわれなくなった美しい日本語を
あらためてよみがえらせてくれます。

*瓜食めばそことしもなく汗滲み昼のやぶ蚊の身をなきめぐる : 若山牧水「

*そことしも ふもとは見えぬ 朝霧に残るもうすき 秋の山の端 :  権大納言内経