斎藤茂吉が、ゴッホの「向日葵」をみて、自分と同じ血が
流れていると感じたようです。
花瓶に挿された十二輪の花すべてに番号を振って
(1)心ハ青緑ノヤヤコイ絵具デ無造作ニ
強ク三四度塗ツテソノマワリハ黃(クロム)デ
グルリトマハシテヰル。ソレカラ青イ・・・・
じつに詳細な観察をして、それは批評家の分析と
いうよりは、同じ作家の精神的プロセスの追体験を
しているんでしょう。
ゴッホの絵画作品のタッチが写実ではなく、
大いに歪められていたり、謎めいた色で塗られたりしていますが、
茂吉にすると、それこそが「写生」だという主張の実作例として
声を大にしていいたかったことです。
『斎藤茂吉 異形の短歌』
品田悦一 著