12・31
魂魄状の海鼠掌上あらざらむこの世の他の糧はしきやし : 塚本邦雄
〜〜神の憑代胃の腑に餅を積み重ね
12・30
鶴食うてよりことのはのおぼつかな : 夏井いつき
〜〜国境溶けて越境するタブー
12・29
アルコール、カロリー、糖質無しというビールの幽霊飲んでしまった : 穂村弘
〜〜卵白で蛋白質摂りすぎの淡白
12・28
捌かれし蟹の記憶は蟹味噌に : 谷雄介
〜〜刎ねられし首駱駝のこぶに
12・27
スプーンの窪みのなかの非在には裏側というふくらみありて : 大滝和子
〜〜アマゾンをなぎ倒すコテお好み焼き
12・26
闇汁の中泳ぐものあるといふ : 蜂須賀薫
〜〜煮凝りのなかまだもぞもぞと
12・25
青時雨ふる夕ぐれにコンロの火細めむとしてふと未来見ゆ : 栗木京子
〜〜キッチンは戦場にして解放区
12・24
古代より孵化せぬ卵割れば冬 : 対馬康子
〜〜ご破産で願う結氷期から
12・23
きみの首ほどの重さか白菜を抱えて帰るしずかな両手 : 大森静佳
〜〜後藤という男の情け煮凝りぬ
12・22
鯨召し上がりし漫ろ言とか空酔とか : 花尻万博
〜〜デジャヴューだけでしまうまの過去
12・21
超音波が歯肉を洗ひつづくる間わたしは門につき考へ続けた : 岡井隆
〜〜見殺しも殺しのひとつ凍て仏