世阿弥の『風姿花伝』を想えば、
新宮晋の『風の能』には
室町15世紀から21世紀へ
連綿とつづく風の流れがみえてくる。
藤田六郎兵衛の笛に
水面のモニュメントが官能にゆれる。
小鼓、大倉源次郎との響き合いを聴くのも、
多武峰の談山神社以来だ。
能楽は『絵馬』。シテは玄祥。
岩戸隠れの天照大神がのぞきみたくなるほどの
あめのうずめとたちからおの派手な踊りで
最高のエンタメパフォーマンス。
ラストは巨きな黒い風船がうかびあがって
漆黒の闇にきえていく新宮演出。
風の姿をまのあたりにした春の夜の夢。