『忙しい日でも、おなかは空く。』

「いま一番好きな詩人は誰ですか?」
「平松洋子さん」と答える。

肩書きはフードジャーナリスト。
本もたくさんでているけど、食や道具に
まつわるエッセイがほとんど。
でも、その食べ物の話がまとまると、
それは一冊の詩集に変身している。
夜空の柔らかさにふれてみたり、
硝子の屈折がわかるほど光に敏感になる。
彼女の文章は全く着飾っていない。
単刀直入、食べ物に焦点があたり、詳細に
レシピにすすんでゆくのだ。
そこに、当たり前の呼吸の工夫、
ごく自然に新鮮な視点を保つ姿勢が
さりげなくまぶされている。
・思いこみ一辺倒のレシピをすてること。
・奇をてらった料理はあきる。
彼女の紹介する料理はごく普通の素材でごく簡単なレシピ。
それが一手間マジックで変身する。
言葉も同じ。いつもの日常会話でわかりやすい言葉だけ。
そのつながりに焦点の当て方をかえれば、空からふりくる
ポエジーになっている。
彼女の紹介するレシピをそのまま真似ても、
おそろしくシンプルでそうおいしくはない。
それは、作り手の心がかわいてるから。

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◆「ごまの味が加わると、びっくりするほどおいしさに
  深みが生まれる。こっくり、ひと味もふた味も深くなる。」
   『忙しい日でも、おなかは空く。』平松洋子