児島虎次郎。
はじめて名前を知った。
時間つぶしに会場を回るつもりが、
一点、一点、歩をすすめるうちに
みぞおちに力がはいってくる。
さきほど観たばかりの、グレコもモローも
かすんできた。
日本の大正から戦前にかけての洋画の
妖気に似た熱い情熱に犯されてしもうた。
この画家こそ、大原美術館の膨大なコレクションを
もたらした人物である。
あまりに有名すぎる名画を教科書や百科事典的に
次から次にみて、しらけた気分があったせいかもしれない。
大原美術館の分院での児島虎次郎展は
うそ寒いからだにビロードのコートを二枚ぐらいかぶって
でてきた温みを感じた。