フェンネルの花の季節に歌集よむ

すくっと立った茎の先のちっちゃな花の黄色が
日に日に濃くなってくる。フェンネル。茴香。

塚本邦雄先生から、むかし『茴香変』を頂戴した。
フェンネルの色ずく時期に読み返している。

直筆の手紙に

~茴香はもと回香です。魚、肉等の鮮度の落ちたのも
これで「香りが回る」意あり~

先生自らコレクションの秘蔵写真をちりばめた歌集で
魔王の姿よりも、ほほえましい子どものいたづらを
見ているような気持になる。

・青春は一瞬にして髭けむるくちびるの端の
茴香のoui! : 邦雄

・家族はとほき未来に死滅して日日の食卓に
茴香をそなふること : 邦雄