岡井隆『わが告白』の新しさ

岡井隆の新著『わが告白』。
岡井が従来の私小説や単純な日記文学を
書くはずがありません。
知の操作で巧みに組み立てられた
フィクションでもありません。
<告白>というテーマのもとに、
過去を回想する現在の自分を語っていく形式です。
離婚3回の女性をめぐる問題、父の告白などの
なま臭いセックスに関することがらがくりかえしあらわれます。
沖合からよせくる波がいよいよ防波堤をつきぬけるかとおもうと
また泡泡と白くざわめいて引潮になって遠ざかります。
原発推進、宮中歌会始など日本の社会問題でも
最もセンシティブな難問の当事者たる行動。
キリスト者としての宗教感。
日記形式の独白で語り続けられる文体は
新しい時代に新しい感性でしかうけつけなくなっている
21世紀以後の日本人にむけての
模索そのものといえます。

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【タイム食句】
神々いつより生肉嫌う桃の花 : 赤尾兜子