『アンチクライスト』はイザナミノミコトである。

千年ガジュマルの根元で全裸で抱き合うふたり。
絶頂にふきあげる樹液は何百の枝枝の幹から
人間の手首となっておいでおいでとゆらいでいる。
性の欲望と原罪のカオスを映像化した美しいセックスシーン。

『アンチクライスト』
監督、ラース・フォン・トリアー
演ずるのは、シャルロット・ゲンズブール

ラストは女が自分自身のクリトリスをハサミで
えぐり獲るという凄絶な展開。
タイトルでありテーマでもあるキリスト教の原罪。
これは日本神話の根幹に通底したものがある。

日本の国土を生み出した女神はイザナミノミコト。
大地母神は島や神をうみだし、生命力にあふれている。
しかし、女陰を焼き病み衰えて黄泉の国にいってからはコワイ。
夫に呪詛の言葉を投げつける殺す神に変貌する。
北欧の人間が日本神話から本歌取りしたのかと
おもうほど展開が符合している。