『観点変更』 今中博之 著
<なぜ、アトリエ・インカーブは生まれたか>
サブタイトル がついています。
先週あるきっかけがあって、このアトリエ を訪問したところです。
デザインの仕事をしていた今中氏の
福祉とアートに賭ける社会的実験のドキュメントといえます。
知的障害者のアート作品は
<アール・ブリュット>として紹介されます。
デュビュフェのはじめた活動であり、
その後、シュールリアリズムのブルトンが
からんできます。
日本でもやっと最近この領域に光があたってきています。
障害者の冠ははずして、同じ土俵で評価すればいいだけです、
という真っ当な意見は当たり前すぎるぐらいのことです。
しかし、それが土俵にあがるまでの前提条件に関して、
あからさまな潜在差別意識や社会的な無理解を
まず配慮してからでないと、この正論も意味をもちません。
今中氏の社会への働きかけは、大きな壁に挑戦するものであり、
逆に美術系大学、アート界、福祉の世界が問われている
社会的状況がみえてきます。
「アール・ブリュット・ジャポネ展」が
ことし、熊本市現代美術館で開かれました。
そのときに、今中氏をふくむ3名の方々が
美術と福祉の運動の展開を講演されました。
<連続講演会録>として、まとめられています。
今中氏の運動はいまの福祉関係者のうごきの主流に対して
<観点の変更>を迫っていることが、
明確にみえてきます。