ザッツ・エンタテインメント。
秋の文楽、大切の段は「化粧殺生石」
勘十郎の狐七役、ケレンの幻惑と豪奢。
咲甫大夫から5人の大夫、
藤蔵から5人の三味線、
10人居並んだ圧倒的なボリュームは
ギリシア悲劇のコロスの荘重と
ブロードウェイ・ハレーションのダブルバーガー。
この日、藤蔵さんの三味線が瞬間トラブった様子。
即座にリカバーするその間合いのスリリングな即興。
もとよりジャズセッション同様、三味線と浄瑠璃は
インプロビゼーションにあるわけです。
背景の大道具の水平を意識したデザインが目を引きます。
上手から下手まで舞台全体を
横直線のラインが無機質にはしる構造。
特に神泉苑の段の浅葱の色漂うシンプルな構図は
潜在意識に染みこんできます。
それがラストの床、三味線大夫十人の肩衣にも
太い白い水脈デザインが連なって、
さらに横のラインが強調される徹底した演出。
スーパー歌舞伎が漫画ワンピースで盛り上がっていますが、
文楽も確実に現代を呼吸しています。
ただ、演目タイトル「玉藻前曦袂 」
これは読めません。
たまものまえあさひのたもと、
読めてもわかりません。
せめてサブタイトルを
「妖狐魔界謀反」あやかしのきつねまかいのむほん
とかすれば、ああ狐が化けて出てくるねんなぁ、
ぐらいは想像できて興味が湧くのでは。