『記紀に游ぶ』 小黒世茂

地震がつづく。
気象がふつうではない。
雨、風、が異常であれば、意識がむかう。

現在の暮らしが突然場面展開であらわれたのではない。
現代は古代とつながっている、おもってる以上に。

そのことに気付かされてくれるのが
『記紀に游ぶ』
書き手の歌人、小黒世茂が
万葉集、古事記の世界を悠々と今の暮らしに
引き寄せてくれた。

国文学者でもないかぎり、古典をあらためて紐解くことはない。
しかし、そこに豊かに拡がる世界はタイムトンネルを使わずとも
一気にはいりこめる時間なのだ。

日本の各地にとんでいき、ハレの祭りからケの魚釣、畑仕事、
生活用具の職人、ふつうの暮らしが当たり前にあって、
そして、和歌の世界もいきいきと蘇ってくる。

2014年の時点で短歌雑誌連載中から注目していた。
ここにきてやっと一冊の本にまとめられた。
わたしの肉体が一本の空気体になって、
するすると古代へワープしていく体験ができた。