リヒター 『ビルケナウ』

リヒター 『ビルケナウ』

アブストラクトの抽象表現がならぶ地続きに
突然タイトル<アウシュビッツ収容所>が
突きつけられる。
歴史が封じ込められ、時間が降りかさなり、
記憶のかさぶたをこじあけて
新しい痛みと鮮烈な血が見たい。
1枚の絵画であれば。。。

しかし、ビルケナウはコーナーの4面に壮大な仕掛け。
まずはメインの4つの連作。
対面して同じ4枚の写真ヴァージョン。
挟んで巨大な鏡、残る1面にはアウシュヴィッツの
殺戮記録写真が4枚。
ある意味、わかりやすい取扱説明書を添付したようで、
しかし、歴史語りを手招きするふりで拒絶、
意味の脈絡は色の脈絡に変異し衝撃的な赤が噴きだす。
情報、知識として作品を見ることから解放されて、
触覚で色の脈々を体感するのが美術の力か。

美術館のそとに出ると
水と木立のランドスケープ。
緊張と緩和のアート体験。
豊田市美術館は谷口吉生の設計。
丸亀の猪熊弦一郎美術館も谷口だ。いいなあ。

来年の1月29日まで。