『だいたい四国八十八か所』は大阪の粋があふれてます

一切の衣服を脱いで2枚の綿布からなる巡礼着に着替える。
属性を脱ぎ裸に立ち返って神に向き合う<メッカ巡礼>。
野町和嘉の写真集はもう15年以上前のものだが、
いまも時々ひらく。
宗教も人間も、どこでもけったいなもんや。

四国八十八ケ所巡礼。
戦場カメラマンの石川さん、偏屈な小説家の車谷さん、
それぞれおもろい歩き遍路本がありますけど、
宮田珠己『だいたい四国八十八ケ所』は
心がスッキリします。
まずお腹をかかえて笑います。
寄席でだんだんと会場があたたまってくると、
<笑いたい粒子>が飛びかいはじめ、お待ちかねの噺家が
しょおもないマクラをふりかけただけで、笑いの渦が
うねりとなる現象がある。それに似た経験をします。
こまかいネタふりがうまいので、ある個所でプッとふきだすと
そんなにおもろいことゆうてなくても、笑てしまうんですね。

次にガイド本としても、実用性に優れ、行き届いている。
宮田さん、兵庫生まれ、阪大出身。やっぱりこの
サービス精神は大阪育ちのもんや。

そして大阪人のシャイの見せ場は巧みにかくされています。
この本の本質は、実は宗教の本質にせまり、
旅の哲学をさぐり、日本人の精神性を的確に分析して
みせる。その学問的真摯さを、おもろおかしくみせんと
気がすまん、という姿勢がなんと気持ええことか。

~下記も卓見の一例
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やりたいことは面倒くさい。
案外知られていないが、これは人生の根本原理のひとつである。
面倒くさいということは、本当はやりたくないからじゃないか、
などと言う人があるが、それは大きな間違いだ。何事もやってから
だんだん面白くなるのであって、やる前はどんなことでも面倒くさい
に決まっているのである。

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