フーテンの寅は両性具有である

香具師は的屋ともいう。
一山あてて大儲けをもくろんで、大当たり。
当たりの的、というわけ。
天神祭には百は軽くこえる。
宵宮の前日から香具師の若い衆が
威勢良く祭りの準備にかかる光景を
子どものころから飽きずにながめてた。

在原業平は実在の人物をさすのではなく、
ある目的をもった政治戦略の軍団だった、という
学説をきいたことがある。
遠国の地方をあらたに統治しようとするときに、
数年も先から色事師たちがのりこんで、
その地域の女たちをとろかしていくのである。
現代でも、妖しげな宗教団体は洗脳手段として
遊びやサブカルチャーで地域にとけこんでいく
戦略をとっている。

地方の街街を流れて暮らす香具師は
その流れをくんでる気がする。
両性具有のにおいも強い。

三谷幸喜の最新作『ろくでなし啄木』。
中村勘太郎が熱演している。
そのテツという香具師には舞台の
オーバーアクションもあって、きわめて
両性具有のオーラを発散する。
侠気、脅し、媚、哀訴。
風土と権力の巨大な神々と
犯し犯されの関係を何百回くりかえしながら
いきていくのだ。

<フーテンの寅>にも
いつも勝手な片想いでふられるドジ男の
役どころであるが、寅のそこにも両性具有の
においがひそんでいる。
それがいまだに老若男女、年齢性別問わず、
人気の秘密なんでしょう。