長谷川利行の絵をみながら朝まで飲んだ。
男はぼそりぼそり語り続けた。
「酔っぱらって描いたとか、
ホームレス暮らしの走り描き、とか
そんな雑なもんじゃない。丁寧で的確。
構図、タッチも神経がはりつめている」。
ハッとして酔いが一瞬ぶれた。
飲んだくれの狂気のイメージだけで見てきた。
安っぽい落魄願望だけの読みで満足していた。
その男にも同じ匂いがあった。
権威に従順ではない。かといって
いつも牙をむきだしにしてるわけではない。
「周囲は天然木だけの住まいで今回の震災を感じた。
その後は、地霊をもらって元気になった。
色彩は光の粒。その粒粒がみんなあかるくなった」。