ユートピアはどこにある?
桃源郷、エルドラド、シャングリラ。
アンデス、アマゾン、ヒマラヤ・・・
精神世界の問題であることはわかっていても、
現実のどこかに、という探検はおもろい。
チベットには『ペユル・ペマユ』という理想郷伝説がある。
ジェームス・ヒルトンがつくりだしたシャングリラの設定が
ヒマラヤ奥地というのは、おそらくこの伝説をふまえている。
そうでなくとも、チベット密教はこの臭いをふりまいているけど。
その伝説の舞台と推測される場所を発見した青年がいる。
『空白の五マイル』。
グーグルで世界の秘境なんぞなくなった時代に
チベットのツアンポー峡谷を単独冒険するノンフィクション。
想像どおり、想像以上の難行苦行の探検話やけど、
なによりエライのは、酔ってないこと。
世界中の冒険家が探検しつくしてなお隠れねむっていた
ユートピア伝説の根拠となる洞窟を発見している、
にもかかわらず、そのパートの記述もきわめて冷静。
この若者の知性と胆力がおそろしい。
インドの仕立屋、キントゥプ。
カヌーで命を落とした武井義隆。
つぎつぎと魅力的な男たちが立ち現われて、
それぞれを主人公にした大スペクタク映画を
観てみたい。