『時香忘』の蕎麦のし棒は丸たんぼ

うどんは増殖開放型。
そばは収斂瞑想型。

蕎麦打ち師には修行僧の匂いがある。
瞑想派、荒行派、伝導派、ちがいがまた味にでる。
開田高原『時香忘』のご主人も蕎麦道を独りゆく、のおもむきがある。

蕎麦打ちの根源をみつめ、過去の常識とされる水まわしのやり方
そのものを問い直す姿勢をずっと崩さない。

そのひとつ、のし棒にも驚いた。
丸たんぼのぶっとさ。重い。
ふつうの3センチ直径の棒では、
蕎麦の麺体を細い線で押しのばすので
ストレスがかかる。早く広げようとすると
余計な負荷がかかる。太い面としてゆっくりと
蕎麦の粒子と粒子、繊維と繊維をやさしくつないでゆく。
蕎麦の香りがふくよかにひきだされてくる。

蕎麦打ちの手順をセオリー通りにくりかえし訓練するのが
一般的な蕎麦打ち修業。しかし、その方法を疑い、
ひとつひとつ原点から納得できる試行錯誤
をくりかえす。ちょっとできません。

蕎麦はもりで食べるのが通。
時香忘さんの<いかすみ蕎麦>は
そんな常識をぶっとばす。
道きわめれば、開放がある。