満田健児の包丁

まだまだ体感は寒さがあっても気分は春待ち。
牡蠣から貝のシーズンにはいります。
料理は見た目も、荒波からおださやかな光あふれる潮へ。

『桜会』の料理をたべたくなりました。
蛤の一皿には、蛍烏賊も戯れ、
こごみのあしらいで、開放的に宇宙の渚に
からだがとけていく気分になります。

満田健児さんには従来の日本料理を
問い直す姿勢が一貫しています。
温度を試行錯誤し、食感を変化させ、
食材の可能性をひきだす魔術と苦闘しています。
しかし、お客様に提供するときには、
エキセントリックに挑発したりはしません。
この抑制が見事です。
お椀はあくまで典雅なたたずまいであらわれます。
手間をおしまない、お金を頂戴するなら誰でもします。
あたらしい食材を大胆にとりこむ、あったりまえでしょう。
大事なことは調理方法をうたがうこと。
フェラン・アドリアは2012年休業宣言をしました。
ラディカルに否定をくりかえし、
己の哲学を持つ意志のある料理人だけに
生き残る資格があります。
包丁が春の光に研がれ輝いていました。

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【タイム食首】
昨晩の鍋の残りを朝に食ひ残りの残りを昼に食ふなり
: 小池光