鶴笑『あたま山』にみる落語のおもろさ

笑福亭鶴笑の『あたま山』をききました。
繁昌亭。

この噺はシュール。
頭の上に桜の樹がはえる、という設定から、
鶴笑がストーリーをすべて先にはなしてしまう。
後半になって、パペット人形をもちだして
またもう一度筋立てをなぞっていく。

邪道やないか。この噺家はもとから人形落語であるから
この構成が成り立つんであって、正統落語やない。
いやまて、落語とはもとから不思議な演芸であります。
たいていのネタは客は知ってるわけです。
前座ネタ『寿限無』から大きいネタ『らくだ』まで
どう展開してオチもわかっていて聞く段どりで成立している。
そうすると、鶴笑の手法は正統派といえる。
あたま山の設定そのものをわかりやすいものにして、
その上で笑いをとっていくのである。
パペット人形の動きも筋道がわかってるからこそ
ますますおもしろい。
『あたまやま』は、これをアニメ化した作品が
海外の映画賞のグランプリを数々獲得していることも
話題になっている。
そうしたニュースが潜在的にあることで、
さらにこの人形落語のバリエーションがゆたかな
ふくらみをもって笑いにかわる。
フォルムの斬新さ、テーマに死。
くすぐりに下ネタ。人形落語であることの
自画像が明確。桜の季節。ケチの金銭ネタ。
要素を分析すると
きわめてしたたかな戦略がみえてくる。

繁昌亭ができてから、上方落語は漫才にまけず
元気がでているという。
しかし、ちやほやおだててはいけない。
笑いのスキル不足、研究のあまさにうんざり。
枝雀の狂気のあとをつぐものを残念ながら
うみだしていないと思います。

鶴笑の落語が単純に人形をつかった邪道と
おとしめてはいけない。
ここには革新の糸口があります。

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