『遺体』。あなたを棄てはしない。

3.11に2万人に死が訪れた。
阪神大震災で6千人の生が奪われた。

理不尽に出現した死の世界で
人々がどのようにふるまったか。

あなたを棄てはしない。
たとえ身元が判明されずに骨と化し、
無縁の灰となっても、隣人は見捨てはしない。

どんなことだって、おこらないことはない。
生まれてくる命と消えていく死だけが現実。
そこに発生する人類の真実を学びとるために、
エロスとタナトスの交叉をみつめる。

石井光太『遺体』。
世界のもっとも貧困でスラム化した地域の
子供たちのむごい生き方と暮らしに
焦点をあててきた作家である。
『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』。
震災前からこの人が視てきたことは、
タイトルからもわかるとおり一貫している。
信頼できる若い日本人をほこりにおもう。

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【タイム食首】
猫の舌のうすらに紅き手ざはりのこの悲しさを知りそめにけり : 斉藤茂吉