石川九楊。
書家として、たくさんの本も上梓されています。
単に、書のジャンルに限定しないで、
現代の日本を代表する思想家といえるでしょう。
文化にたいして根源的です。
姿勢がラディカルです。
そんなわけで、前前から九楊さんの書を
手元におきたいと、やっと念願がかないました。
アンリ・ミショーの画いた作品のようです。
これが、書の世界です。
フランシス・ベーコンは、ミショーの人物を
<人間のイメージを作りかえる手段>、と批評しましたが、
九楊の書は、文芸を1000年単位でつくりかえる実践を
しているのだとわたしにはみえます。
この掲載した書は『葉隠』。
恋の至極は忍恋と見立て候。
『石川九楊源氏物語書巻五十五帖』
2008年の55の書体から、一番近い書体は
<若紫>の巻です。
紫の上との出会いと、藤壺との不義密通。
源氏物語のテーマを象徴するパーツです。
~微動しつつも肥痩を抑制した筆触と、
垂直と斜行の構成で、大事件としてではなく、
背骨となる帖として描き出す。~
こう解説にあります。
ここから、『葉隠』にむかった姿勢も
よみといていく糸口がありそうです。
推理小説の謎解きの感覚ですね。
最後のネタバレがないから、
永久にたのしめます。