志賀理恵子『カナリア門』

  1. <毛皮を着た人-頭>

    (前略)
    マタギの方たちは、熊を殺し、皮を剥いで解体しているのに、
    その光景は逆に、今まさに生まれてくる赤子を、母親の胎内
    から取り出している産婆のように見えた。
    親方が、皮を剥いだ頭(神棚に祭る部分)を私の前に突き出し、
    「これを撮れ」と言う。
    彼の手に包まれた頭の赤い目が真っ直ぐこちらを見つめる。
    私はそれに目をあわせながら、シャッターを押した。
    心がドクドクと波打って張り裂けそうになる。
    優しい目。
    私は今まで、あんなに美しいものを見たことはない。
    (後略)

    ~~志賀理恵子『カナリア門』~~

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    神棚のかわりに、すぐに鉄柵に保護しました。

    志賀理恵子さんの作品は今、2か所で展示されています。
    ①『カナリア』 金沢21世紀美術館 (9・1まで)
    ②『螺旋海岸』 あいちトリエンナーレ(10・27まで)