アール・ブリュット。
むつかしい。
作品理解がむつかしい、以前にまず
言葉の定義、ジャンルの枠そのものが確定できない。
樋口ヒロユキ『真夜中の博物館』。
この中で、<狂気と心霊>のタイトルで、
アール・ブリュットを大きな1章を設けて論じています。
デュビュッフェとブルトンがジョセフ・クレパンを巡って
決別していく経緯を例にあげています。
アール・ブリュットを美術と敵対する呪術であったとすれば、
シュールリアリズムは、美術と密通する呪術。
デュビュッフェは実践で勝利を収め、ブルトンは批評的勝利を得て、
永遠にふたりはすれ違ったままとなりました。
障害者アートをひとくくりで、アール・ブリュットとするのではなく、
狂気が霊的に美に融合していった創造者を個人として評価する。
それとても、享受サイドの論であって、作品をつくる当人の精神世界には
またべつの迷宮があるわけで。