焙烙は持ち手の筒からゴマをだす

椿をさすのに、なにかと探して、

ほうろくに活けてみる。
ほうろくは焙烙とかく。ゴマを焙煎する道具である。
すり鉢ですら家庭から削除された日本のキッチンに焙烙は幻に近い。
わかりやすいところで、ぎんなんを煎る。お茶の葉を焙じる。
メインはやはりゴマ煎り。この道具、よくできていて、持ち手が筒状。
そう、煎りあがったゴマをとりだすのは、持ち手をかたむけて、筒の出口から
手のひらに移す。指先でひねりゴマにして、料理の上にトッピング。
この一連の仕草が日本の美学である。しなやかな美人の手のひらで
手品のように、ごまがひねりだされるのを想像するだけで、いい香りが
してきませんか。

焙烙をつくる作家さんは少ないです。
土鍋やほうろくは、焼成温度がちがうので、
茶碗や皿と一緒の窯ではできないんです。
ですから、土鍋作家は土鍋専門になるわけですね。
和田萬の焙烙は、甲賀の杉本寿樹さんにお願いして
つくってもらいました。