松枝さん、上方落語のはんなり味

繁昌亭で笑福亭松枝さんの噺をききました。
上方のはんなりした味わいが醸しだされた語り口で、
なんでいままで印象に残ってなかったんやろ。

松鶴の弟子で、入門は松喬さんの次。年齢も
ふたりともアラ還。噺家の体臭が語りとあいまってくるんが
ちょうどこの年齢かとおもいます。
まったりとしたあたりは、文枝さんの風情もあるので、
豪放の松鶴系の色が浄化されたところか。
ここで気がついたけど、名前も松鶴と文枝の
両方からもらってるではないですか。
これから、花ひらいていく芸風。

落語とは、もとからストーリーは知っている話を
なんでおもろいて笑えるんでしょう。
噺家一人の全人格にかかっているわけです。
一人の男が舞台でさらしものになっているわけです。
談志も枝雀も狂いながら演じていました。
同時代にいきあわせたのであれば、きいておきたい。
そうおもわせるのは、だれでしょう?
談春か鶴瓶か。
熟成途上ですが、その進化過程が同時代でないと
きけないわけで、完成品は後世になってからCDで十分です。
演劇全般に、舞台はお金を払っているからには、
少なくとも演じる側にベストを期待するものです。
ただ、落語の前座だけは舞台で修業させる場として
暗黙の了解があります。
だから、客はああだこうだと言いたい放題
いって育ててやる。
この下からのえらそうなものいいがゆるされる文化が
落語にはある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【タイム食首】
馬鹿げたる考へがぐんぐん大きくなりキャベツなどが大きくなりゆくに似る
: 安立スハル

その時点での完成度