金ゴマの栽培で数年つづけて
トルコに渡った時期があります。
アヤソフィア、トプカピ宮殿の鳥籠、
地中海沿岸の神殿廃墟、カッパドキア。
並はずれたスケールのケッタイさ。
いくつもの文明が闘い交差したその結果の遺跡。、
巨大なうねりに溺れて酔っぱらってしまう快感があります。
こんなことをおもいだしたのは、矢野太昭さんのちっちゃな
20センチほどの彫刻を前にしてのことです。
古代硝子の創作のほかに平面のフレスコ画と彩色テラコッタ彫刻。
単にフレスコ的な世界であれば、トルコまで連想が遊びはしないのですが、
どこか黒人の王の血がかよう異端の臭いのせいでしょうか。
イスラムは偶像崇拝を禁じています。
アラビア文字の装飾性や絨毯文化は、偶像ではないものでの
美的求心性の表れでしょう。
トルコには宗教、芸術の混沌がマグマ状態で渦まいています。
その狂熱の残り香と静的な廃墟の予感が、矢野太昭さんの
彫刻からにじんできます。
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【タイム食句】
箸置きに箸を置いたら明日になる : 筒井祥文