現代アート小説『道化師の蝶』

デュシャンが小便器を<泉>のタイトルで
アンデパンダン展に出品したのが30歳。
興味の対象は言葉にもあって、
32歳のときには、言語実験で
意味と記号に関する研究をしたり、
駄洒落の本もだしています。
1920年のことです。

それからすれば、今回芥川賞の
円城塔の『道化師の蝶』は言語実験で
アート的に新鮮です。
しかし、すでに90年前にアートの側から
ジャンルはとけはじめているのに、なにを
いまごろ、これは小説としてはわからんとか、
いっとるんやろ。もう実験なんてゆうのも、
ずれている感があります。

小説には、言語論の比喩として、<網>と<蝶>が頻繁に
でてきます。またエッセイでも
<厚みをもった網目を書いても、外には玉を放り込んで
くる存在がある>とかいています。
これなんぞ、今大人気の<永遠の永遠の永遠>展覧会中の
草間弥生を連想します。
彼女の幻覚シンボルは<網>と<水玉>です。

登場人物が<友幸友幸>というケッタイな名前ですが、
現実に若手歌人には<斉藤斎藤>さんがいますし、
劇作家の<松尾スズキ>さんもすでに普通になじんでますよね。

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【タイム食句】
大地に湧きし魚は河に棄てられん : 安井浩司