後藤靖香の<まなじりを決した日本人>

後藤靖香の作品も見に名村造船所跡地に。

この場所は大阪のアートシーンの拠点として、
これからじわじわと増殖していく注目ポイント。
広大な敷地。演劇、映画、コンサートには
ぴったりやし、地下鉄も便利。
先日お会いした立体作家さんは、2メートルをこえる
作品はここの倉庫に保管してもらってるとおっしゃってました。
そらそうですわなぁ、平面やとぶらさげてあるていど枚数ストックは
できるけど、立体は保管をどないしてはるやろとおもてました。

さて、後藤作品は、『床書キ原寸』。
会場にけば、タイトルの謎がとけます。
造船所の倉庫4Fにある製図室が会場。
床板に造船の原寸大の図面を直接かいていく
作業場。実際には、造船時代が終わってつぎには
橋梁の原寸大の設計。いまも床には、その図面が
原寸大で残っています。
床もすごけりゃ、天井もエライ。
低い。製図するだけだから鉄骨のままの低い天井に
びっしりと蛍光灯がならんでいます。広大なスペースですから
100本は軽くこえる本数でしょう。
そこに後藤靖香さんの絵画が2枚ぶらさがってかたちで展示
されています。横7メートル。
青年が床にへばりついて製図しているシーン。
上から圧迫するように蛍光灯がっかぶさってきて、この作品は
ここでしか発想できなかったし、またここでしか展示できないのでは
ないか。まさに展示会の極点。

後藤作品は、これで3回目。劇画的にむかしの暮らしをかいてるなぁ。
とおりすぎ、ほかの刺激的なアートをみて、会場をでるときに
なぜか頭にのこってる。
そんな印象で今回の大作と遭遇。
これは<日本人論>だと認識した。
彼女の作品に登場するのは、まぎれもなく
ある時代の日本人。
まなじりを決して、しかも過剰ではなく、淡々と
日常をひたむきに生きる日本人がそこにいました。
目力、めじからという言葉がもてはやされてるけど、
それはどうみえているか、の視点で語られる安っぽいもんで、
内面からの腹の坐り方を問うてはいない。
後藤の作品によって、わたしが無視して意識的に削除してきた
まぎれもなくほこるべき血脈である日本人の姿をつきつけられました。
これはアートの力。

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