福岡伸一の分子生物学の語りは一冊の長編散文詩。偏狭 な天才科学者達の生態も難解な分子構造も、彼のあざや かな手付きにかかると手品のように浪漫あふれる世界が 立ち現れてくる。叡知こそ詩情を発酵させる酵母を実証。 福岡伸一『
<火計り>茶碗で”かるかん” :薩摩デー
朝鮮から運んできた白土を朝鮮の陶工に焼かせる。窯の 火だけが薩摩だから名付けて『火計り』。しゃれてんね ぇ。お菓子は”かるかん”。明石屋が<炉開き>のため に新物の自然薯でつくった和菓子は奇跡的な軽みの美学。 かるかん元
煮凝や母の手元に古い筥 / 翠胡
食句塾の季刊も26号。今回から批評の時間をたっぷり。 助詞<が>は使こたらあかんのか?主水絶好調「眠れな い月に貼り付いている鼓膜」「パ・リーグのような紅葉 を思いおり」。”はこ”の漢字には筥より筺か。難しい。 (食句塾
山法師、紅葉して枯れゆくまでの”はかな”
山法師が2本ある。清楚真っ白い花盛りの春。深紅の実 を転がり落とす初秋。それは幕開けにすぎない。時雨月。 11月の紅葉が始まると野生の落葉樹の見事な日々の変 化に息をのむ。枯れるまでの変幻自在は”はかな”の極。 山法師の
馬のたてがみで刷く根来の朱漆
根来の朱の背後からうかびあがる黒。その闇の魅力も最 近は単純にみせかけのデザイン処理で薄っぺら。夏目陽 介さんの根来はどてっと粘りある朱漆が野太い刷毛目で 塗られている。荒ぶる神々の血の滾りであるやもしれぬ。 夏目陽介
男の川に牛は流され、女の滝はしぶきあげ
覗き男が女の部屋に侵入する4夜の物語。壁に滝の絵。 これがケッタイ。電気がつくと滝しぶきの響きも流れる。 テレビかと。荒涼とした街と暮しの展開になんか異様。 閉ざされた欲望男にとって女は過剰な生命力をふりまく。 イエジー
鶴瓶 おとといについで連続『らくだ』
6日連続公演の3回を通った。57歳、落語に本格的に 取り組みはじめて7年。壮年充実期に闘う姿勢をさらけ だしているこの時期の鶴瓶を見逃したら損。どうしょう もない酔っぱらいの愛嬌が鶴瓶の天然キャラそのまんま。 鶴瓶 第二
現代アートの田中恒子コレクションが公開されてます
100人以上の作家のものを一度に見られる機会は無い。 現代ゆうたかって15年ぐらいの経過でめまぐるしく変 化してるから、若手のとがったセンスの掴まえる『今』 を比較するとおもろい。児嶋サコのケッサクぬいぐるみ。 田中恒子
鶴瓶の『らくだ』は死んでへんかった
1時間の一人芝居。立て膝ついての酔っぱらいはスケー ルがでかい。ラスト、鶴瓶オリジナルのらくだ復活。屑 屋とだけ絡んで同じサゲにするより、兄貴分、願人坊主、 隠亡の5人からみの酔っぱらいドタバタにしたらどやろ。 笑福亭鶴